大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和55年(ネ)1123号 判決 1982年4月27日

控訴人(原告)

草間四郎

被控訴人(被告)

朝陽運輸株式会社

ほか一名

主文

原判決を取消す。

被控訴人らは控訴人に対し各自金八〇万四二六五円及び内金七三万四二六五円に対する昭和五二年九月二八日以降完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。

控訴人は被控訴人朝陽運輸株式会社に対し金四万八二六九円及び内金三万八二六九円に対する昭和五一年一〇月一〇日以降、内金一万円に対する昭和五四年九月一八日以降各完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。

控訴人、被控訴人朝陽運輸株式会社のその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、第一、二審(本訴、反訴)を通じ五分し、その三を控訴人、その余を被控訴人らの負担とする。

この判決の主文第二、第三項は、仮に執行することができる。

事実

控訴代理人は「原判決中控訴人敗訴部分を取消す。被控訴人らは控訴人に対し各自原判決主文一項の金員のほか、金二二一万四四三五円及びこれに対する昭和五二年九月二八日以降完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。被控訴会社の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次に訂正、付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴人の主張(本件事故発生の状況)

1  本件事故発生時の小笠パーキングエリアの形状は、別紙図面(縮尺五〇〇分の一)のとおりである。

当時降雨のため路面は濡れていた。

2  原告車は、同図面甲(以下同図面上の地点は、同記載の記号のみで表示する。)に停車し、その際被告車はAに停車していたところ、原告車発進とほぼ同時頃被告車はAからBに後進し、Cに移動したうえ、Cから発進した。

甲位置の原告車の右フエンダーミラーではC位置の被告車を見ることはできないから、原告車の発進は、被告車の進路を妨害したことにならない。被告車は、原告車の直後を安全な車間距離をとらず、前方注視を怠り、漫然走行して原告車に追突したものである。

3  後記二2の事実は争う。本件事故当時、路面は湿潤で、被告車は空車であつたから、Cを二速発進し、普通加速しているとみられ、発進後約二〇メートルのイでは時速約二七・一キロメートルとなり、もし、被控訴人高橋がイで原告車の発進を目撃し、急制動をとつていれば、×に至る前、約一三・五メートルで停止し、原告車との衝突は回避できたはずである。

二  被控訴人らの主張(本件事故発生の状況)

1  前記一1の事実は認める。

2  同2及び3の事実は争う。

原告車は、1に駐車し、一方、被告車は、A'に駐車し、ア'まで後退したうえ、発進し、運転者・被控訴人高橋は、ア'発進後三六メートルのイにおいて原告車が右進の合図もしないまま、1(イとの距離一四メートル)を発進し、突然被告車の前に割込むのを発見し、急制動をかけたが及ばず、二四・一メートル先の×(1からの距離一二メートル)において衝突した。この場合、被告車は濡れた道路上で急制動をかけながら、急転把することはできないから、原告車との衝突を避けえなかつたものといわなければならない。

摩擦係数〇・五の濡れたアスフアルト道路として試算すると、発進後三六メートルのイでは時速約四七・八キロメートルとなり、急制動による停止まで約三七・五メートル(時速四〇キロメートルとしても二七メートル)を要する。

三  証拠〔略〕

理由

当裁判所の認定判断は、次に訂正加除するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一〇枚目表九行目「成立」から一〇行目「尋問の結果」までを「本件事故発生時の小笠パーキングエリアの形状が別紙図面(縮尺五〇〇分の一)のとおりであり、当時降雨のため路面が濡れていたことは当事者間に争いがなく、右争いのない事実、成立に争いのない甲第二号証、控訴人主張のような写真であることに争いのない甲第一四号各証、第一六ないし第二二号証、当審証人伊郷泰雄の証言、控訴人(原審及び当審)・被控訴人高橋(当審)各本人尋問の結果(各一部)」に改め、裏三行目「左側」の次に「(別紙図面1)」を、同行「エンジンをかけ」の次に「助手席に岡野を同乗させ」を、六行目「ため」の次に「そのほか後方の安全を確認しないで、右ウインカーを点滅させ」を、七行目「地点」の次に「(同図面×)」をそれぞれ加え、末行「駐車場で」から一一枚目表五行目「進行して」までを「区画線で示された駐車場A'で同僚から被告車の運転を交替し、いつたん、ア'まで後退したうえ、同エリア内の右駐車場南側道路を東京方面に向けて発進し、約五〇メートル進行した地点(イよりもかなり先になる。当時の速度は毎時五〇キロメートル弱)で前方に原告車を認め、急制動の措置をとつたが及ばず、×において」に、七行目「道路で」から八行目までを「道路である。」に、一〇行目から裏一一行目までを「甲第二号証(実況見分調書)は、その記載及び当審証人伊郷泰雄の証言により、本件事故発生後二時間以内に警察官が実況見分した結果に基いて警察官が作成したものと認められ、その記載は特段の事情のない限り真実とみるべきであるが、同調書見取図の<ア><イ>の距離が五一メートルとある部分は、争いのないエリア内のアイランドの距離関係に照らし誤りとみるほかなく、同見取図中停車あるいは衝突位置を示す<ア><1><×>が正確で、被告車の走行中の一地点に過ぎない<イ>の位置及び関係の距離につき誤りがあるとみるのを相当とし、当審証人伊郷泰雄の証言する事故状況ないし右実況見分時の控訴人の指示説明中甲第二号証に記載のない部分、控訴本人の供述(原・当審)中甲第二号証(<イ>に関するものを除く。)に反する部分はいずれも措信しない。また、被控訴本人高橋の当審供述中、前記認定に反する部分(ことに原告車発進時にこれを注視していたとの点)は、同供述により成立を認める甲第三号証、成立に争いのない甲第二四号証、同被控訴人(当審)及び控訴人(原・当審)各本人尋問の結果により認められる本件事故発生直後(警察官到着前)職業運転者である被控訴人高橋が控訴人に対し自己の非を認めて謝罪し、昭和五六年六月には控訴人あて本件事故が自己の不注意による旨の書面を自筆して交付している事実に徴し措信しない(但し、甲第三号証の記載から、被控訴人高橋が本件事故を自己の一方的過失によると自認したとみることはできない。)。当事者双方が速度関係、急制動による衝突回避の能否につきそれぞれ主張する力学上の見解及びこれに基く推論は、前記認定事実と前提を異にし、前記認定は、被控訴本人高橋尋問結果(当審)により認められる、当時中程度の降雨中であつたこと、被告車が空車であつたことに照らすと、成立に争いのない乙第四号証の記載、当審調査嘱託の結果(但し、本件事故当時路面が濡れていた点に基く修正をする。)その他力学上の法則に反するところはない。」にそれぞれ改める。

同一二枚目表六行目「右認定事実によれば、」の次に「原告車が1を発進した時には被告車は既に区画された駐車場内でなく、南側道路上のア'にあつたか、あるいはア'を発進していたとみるべきところ、」を加え、一一行目及び裏一〇行目各「駐車場」を「パーキングエリア」に、裏七行目「被告車」から八行目「進行し」までを「原告車の動静に注意を払わず、衝突直前にはじめて前方に原告車を認め、急制動の措置をとつたに過ぎず」に改める。

同一三枚目裏二行目「三割」を「七割」に改める。

同一六枚目表一〇行目「三〇〇〇円」を「としてそれぞれ二〇〇〇円、一〇〇〇円」に改め、裏四行目末尾に「よつて、右出損のうち二〇〇〇円に限り本件事故に基く損害と認める。」を加える。

同一一、一二行目「一〇三万五九五〇円」を「一〇四万八九五〇円」に、一七枚目表初行「七割」を「三割」に、二行目「三一万七八五円」を「七三万四二六五円」にそれぞれ改める。

同四行目「弁護士野口利一」を「弁護士ら」に、裏三行目「三万円」を「七万円」にそれぞれ改める。

同五行目及び六行目「三四万七八五円」をいずれも「八〇万四二六五円」に、七行目「金三一万七八五円」を「弁護士費用を除く七三万四二六五円」にそれぞれ改める。

二  同一八枚目表五行目及び裏二行目「七割」をいずれも「三割」に、同行「八万九二九二」を「三万八二六九」にそれぞれ改める。

同六、七行目「弁護士安田昌資」を「弁護士ら」に、末行「金九〇〇〇」を「本訴状送達の日の現価において金一万」にそれぞれ改める。

同一九枚目表三行目及び五行目「九万八二九二円」をいずれも「四万八二六九円」に、五、六行目「金八万九二九二円」を「弁護士費用を除く金三万八二六九円」に、七行目「金九〇〇〇円」を「弁護士費用金一万円」にそれぞれ改める。

ところで、原審新第二回口頭弁論調書の作成につき齟齬があり、原判決言渡裁判所が基本的口頭弁論に関与したと確定することができないので、民事訴訟法三八七条により原判決を取消したうえ、前記趣旨にしたがい、控訴人・被控訴会社の各請求を主文第二、第三項の限度で認容し、その余は棄却することとし、訴訟費用の負担につき同法九六条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 倉田卓次 高山晨 大島崇志)

別紙図面

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例